研究課題
本研究では、顕在的・潜在的知覚の運動反応における特性を反応時間、刺激検出率、誘発電位、事象関連電位、運動準備電位から総合的に検討した。昨年度の実験では事象関連電位特性に統計的有意性が得られず、論文として掲載には至らなかったことから、今年度はさらに被験者を増やしてデータ収集を行った。また今年度からの試みとして、経頭骸磁気刺激(TMS)により運動関連領野の興奮性の変化(運動誘発電位、MEP)も検討することとした。しかしTMS実験の経験不足から十分なデータ収集には至らず、さらに効率的なデータ収集のために新たに8字局在型コイルを用いて実験を継続している。事象関連電位の実験は昨年と同様、プライム刺激の検出率を50%、80%とする条件を設定し、そのときの反応時間と脳波を測定した。その結果、条件間に統計的な有意差が得られた。P100潜時では、Mask刺激のみの条件より50%条件、さらに80%条件がそれぞれ有意に短縮し、プライム刺激の提示により一次視覚野付近の情報処理が有意に早期化していた。刺激の認知を反映するP300では潜時ではなく振幅に有意差が認められ、Mask条件と50%条件の振幅がほぼ等しく、80%条件のみが有意に小さい振幅を示した。これは、Mask条件と50%条件では強度の強いmask刺激のみを認知していたために振幅が大きく、80%条件では強度の弱いプライム刺激を認知できたことによりP300が小さくなったものと考えられる。LRP潜時については頂点振幅の50%電位が現われる潜時を観察し、R-LRPではなくS-LRP潜時に各条件間の有意差が認められた。さらにすべての指標を用いて反応時間を従属変数とする重回帰分析を行ったところ、50%、80%条件ではS-LRPの貢献度が高くP100の貢献が低く、プライム刺激が知覚系ではなく運動系の促進に関与していることが推察された。
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Perception (印刷中)