研究概要 |
HSP(Heat Shock Protein)の持つシャペロン機能および防御・修復機能が,トレーニングによる運動のパフォーマンスの向上や,また身体運動が健康に対してもたらす様々な効果を説明するための新たな基礎概念になりうることが示唆されている。しかしながら,運動時に最も激しい内部環境の変化に曝される筋組織,特にヒト骨格筋におけるHSPに関する研究はあまり行われてはおらず不明な点が多い。本年度は,HSP発現の臨床的応用に関する研究として,研究(1):伸張性運動前の温熱負荷のタイミングの違いがヒト骨格筋における遅発性筋痛とその繰り返し効果に及ぼす影響,研究(2):伸張性運動直後の温熱処置が高齢者における遅発性筋痛に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 研究(1)では,マイクロウェーブ温熱負荷装置を用いて伸張性筋収縮を行う2日前,1日前,あるいは直前の異なるタイミングで20分間の温熱を上腕部に負荷し,遅発性筋痛および1週間後に行う2度目の伸張性筋収縮によって発生する遅発性筋痛(繰り返し効果)について評価を行った。その結果,伸張性筋収縮前に行う温熱負荷は,そのタイミングにかかわらず筋の1次的,2次的な損傷を抑制または軽減させるが,繰り返し効果を増強させることはないことが示唆された。また,研究(2)では,高齢者を対象として伸張性筋収縮直後に温熱処置を筋に与えた場合、遅発性筋痛を抑制することはないが、関節可動域の早期の回復をもたらす可能性があることが明らかになった。 その他,最終年度として各年度で得られた研究データを再検討し,総括を行った。
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