従来の身体運動によるPGC-1α発現の研究で対象とされたのは低強度・長時間運動であったが、今年度は高強度(体重の14%の重りを着けて)20秒間の水泳運動を10秒間の休息を挟み14回行う)水泳運動がラット前肢骨格筋(epitrochlearis)のPGC-1α発現に対する影響を見た。その結果、運動終了直後にはPGC-1αの発現は見られなかったが、運動終了6時間から18時間には、運動開始前の値の約2倍の高値となった。また、このPGC-1αの発現は、運動直後にグリコーゲン濃度が低下した筋に特異的であった。このことにより、PGC-1αは、筋内の情報伝達系、すなわちAMPK活性を介して運動強度依存性の増加することが明らかとなった。この結果は、筋の酸化能の基礎となるミトコンドリアの酸化系酵素の発現や、糖代謝能の指標となるGLUT-4の発現を引き起こすことが推測されているPGC-1αは、運動強度が高ければ短時間で発現量が増加し、その後の代謝能向上に関係するタンパク質の発現量を増加させることが可能であることを示唆している。 身体運動により骨格筋の核分画に特異的に発現する蛋白をプロテオミクス法により網羅的に検索する前段階として核分画の抽出法に関する研究を行ったが、これまでの成果としては、未だに他の細胞骨格タンパク質が多量にあり、充分な純度で核分画の抽出はされていない。
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