研究概要 |
運動療法の早期介入および持続的効果を検討するために,2004年から10年間の縦断調査として,8,000人を対象に全国体操教室を施行している。評価項目については,(1)運動機能(2)生活自立(3)物忘れ(4)うつ(5)老年症候群(6)社会交流(7)健康感・活動(8)転倒経験(9)困難な課題への取り組み-についての35項目を設け,自立から虚弱,虚弱から寝たきりの機能評価も詳細な項目を設けた。2004年度では、24都道府県で体操教室に参加した4,541人と参加していない一般市民395人(いずれも女性)との間で,活力度の加齢変化に対する運動効果を横断的に検討した結果,両群とも65歳以降から活力度と健康意識が低下傾向にあり,老年症候群(頻尿,視力低下,不眠,関節痛),物忘れ,うつが増加傾向にあったが,一般市民群に比べて体操教室参加群では有意に抑制されていた。 活力度の維持に役立つ運動要因については,運動継続年数と運動頻度が有意に関与していた。非参加群では70歳代以降では活力度指数の加齢変化が低下傾向だったが,運動教室参加群では有意に維持しており,虚弱への早期予防効果が認められた。引き続き縦断変化を追跡している。 運動効果の詳細を検討するため、47-72歳の体操参加66名に熟達度に応じ、年齢をマッチングさせ、指導者、熟達者、初心者に分け、身体計測、骨検査(DXA、脊椎X線撮影)、運動硬化検査(動脈脈波速度)、バランス・柔軟検査を行った。身体計測では指導者、熟達者ともに有意にウエスト/ヒップ比の低値が見られた。またDXAにおいて大腿骨頚部の骨密度が指導者において高値を示した。動脈脈波速度ではba-PWVが指導者、熟達者において低値を示し、定期的な均整柔軟体操は骨密度、動脈硬化指数の改善が得られると考えられた。
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