研究概要 |
運動療法の早期介入および持続的な効果を検討するために,2004年から10年間の縦断調査として,8000人を対象に全国体操教室を施行している。評価項目は,(1)運動機能(2)生活自立(3)物忘れ(4)うつ(5)老年症候群(6)社会交流(7)健康感・活動(8)転倒経験(9)困難な課題への取り組み-についての36項目を設け,自立から虚弱,虚弱から寝たきりの機能評価も詳細な項目を設けた。2005年度では、24都道府県で体操教室に参加した5,500人の横断データと2700名の縦断データが得られた。全体で活力度は上昇(47.8→48.1)し、カテゴリー別では、生活自立は上昇、健康意識、社会交流、うつは上昇、老年症候群、認知機能は下降、運動機能、意欲は不変であった。 転倒予防では,年齢別では、60歳代は、20.1%が13.3%に減少(p<0.01)、70歳代は30.8%が25.9%に減少(p=0.053)した。転倒スコア(21点満点)は、5.76から5.41に改善した(p=0.06)。運動習慣は、転倒頻度を減少させる。 運動効果の詳細を検討するため、47-72歳の体操参加66名に熟達度に応じ、年齢をマッチングさせ、指導者、熟達者、初心者に分け、身体計測、骨検査(DXA、脊椎X線撮影)、動脈硬化検査(動脈脈波速度)、バランス・柔軟検査を行った。身体計測では指導者、熟達者ともに有意にウエスト/ヒップ比の低値が見られた。またDXAにおいて大腿骨頚部の骨密度が指導者において高値を示した。動脈脈波速度ではba-PWVが指導者、熟達者において低値を示し、定期的な均整柔軟体操は骨密度、動脈硬化指数の改善が得られると考えられた。 この機序の一部に、運動による液性因子の改善を認めている。
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