研究課題
基盤研究(B)
高齢になるにつれて出現頻度が増える生活機能低下、転倒、尿失禁、低栄養、軽度の痴呆、閉じこもりなどの老年症候群と呼ばれる症状の出現は、高齢者の生活の質を阻害する要因のみではなくて生命予後にも大きな影響を及ぼすことが知られている。本研究では、複数の老年症候群の徴候を持っている地域在住高齢者の特徴を詳細に把握した上で、その改善を目指す介入プログラムの有効性を長期的に追跡することを目的としている本研究の第1年目に得た主な成果は次の通りである。東京都板橋区在住70歳以上の男性485、女性669名を対象に2004年11月に行った調査に基づき、女性について分析したところ、生活機能低下者36.1%、過去1年間で転倒経験者19.5%、尿失禁者33.2%であった。一方、複数の危険因子を有する者の割合は21.1%(141/669)であり、詳細な内訳は生活機能低下+転倒4.2%、生活機能低下+尿失禁9.9%、転倒+尿失禁3.4%、生活機能低下+転倒+尿失禁3.6%であった。複数の老年症候群の危険因子を保有している者(141名)の特徴を明らかにするために、健常者(528名)と既往歴、身体機能、血液成分などを比較した。その結果、複数危険因子保持者は過去1年間で入院した者の割合(複数危険因子保持者:19.9%、健常者:11.8%)が高く、脳卒中(複数危険因子保持者:14.2%、健常者:7.6%)や泌尿器の病気(複数危険因子保持者:29.1%、健常者:20.3%)の既往が高かった。また、握力(複数危険因子保持者:16.5±4.5kg、健常者:17.6±4.2kg)、通常速度歩行(複数危険因子保持者:1.1±0.3m/s、健常者:1.2±0.3m/s)、最大速度歩行(複数危険因子保持者:1.6±0.4m/s、健常者:1.8±0.4m/s)、Functional reach(複数危険因子保持者:31.4±6.1cm、健常者:33.0±5.5cm)、膝伸展力(複数危険因子保持者:49.3±15.7kg、健常者:53.1±16.6kg)、開眼片足たち(複数危険因子保持者:28.1±23.0秒、健常者:36.1±23.2秒)などの身体機能の成績は有意に低かったが、総コレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、血清アルブミン値などの血液成分には有意な差が見られなかった。第2年目である平成17年度には複数危険因子保持者の危険因子改善を目指す介入を行うための準備が進んでいる段階である。
すべて 2004
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