研究課題
高齢になるにつれて出現頻度が増える生活機能低下、転倒、尿失禁、低栄養、軽度の認知症、閉じこもりなどの老年症候群と呼ばれる症状の出現は、高齢者の生活機能の自立やQOLを阻害する要因のみではなくて生命予後にも大きな影響を及ぼすことが知られている。昨年度には、複数の老年症候群の徴候を持っている地域在住高齢者の特徴を詳細に把握することが目的だったが、今年度はその改善を目指す介入プログラムの有効性を検証することが主な目的である。東京都板橋区在住70歳以上の男性485、女性669名を対象に2004年11月に行った調査に基づき、複数の危険因子を有する141名に老年症候群の改善を目指す「健康づくり教室」への参加を促したところ、60名(42.6%)が教室参加を希望した。RCTにより、介入群30名と対照群30名に割り付け、介入群には週2回、1回当たり60分の包括的な運動指導を3ヶ月間行い、対照群には2週1回(合計6回)の一般健康教育を行った後、身体機能の変化を検証するために繰り返しのある分散分析(2群×2回)を、老年症候群の兆候や意識の変化を確かめるためにx^2検定を施した。得た主な結果は次の通りである。介入前後における介入群と対照群間の変化を調べたところ、内転筋「介入群(事前:17.7±4.5kg、事後19.2±4.5kg)、対照群(事前:18.6±4.4kg、事後18.7±4.4kg)、F値=4.155、P=0.048」、最大歩行速度「介入群(事前:1.7±0.3m/sec、事後1.9±0.4m/sec)、対照群(事前:1.7±0.3m/sec、事後1.7±0.4m/sec)、F値=4.469、P=0.040」、Functional reach「介入群(事前:31.7±6.8cm、事後33.5±5.1cm)、対照群(事前:33.7±4.7cm、事後32.7±5.3cm)、F値=4.063、P=0.049」で有意差がみられ、介入群が対照群より顕著に改善される傾向が観察された。一方、生活機能を評価するTMIG得点は介入群の場合、事前10.8±1.5点から事後11.8±1.3点へと有意(P=0.001)に増加した。介入群における尿失禁者の割合は、事前89.7%から事後65.5%へと有意(P=0.016)に減少した。これらの結果を踏まえて、平成18年度には、3ヶ月間の介入がその後の身体機能や老年症候群兆候の変化にどのような影響を及ぼすかについて長期的に観察する予定である。
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Archives of Gerontology and Geriatrics 42・1
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