研究目的:ペルーのアンデス高地に古くから馬鈴しょの果肉に紅色や紫色のアントシアニン色素(AN)の原種が栽培されている。これらの馬鈴しょを基に新しい品種の育種および系統選抜が独立法人農業技術研究機構北海道研究センター馬鈴しょ育種研究室で行われた。この有色馬鈴しょは紅色系、紫色系、黄色系の色彩を有し、従来の男爵いもやメークインなどの品種とは異なり新しい食材として注目されている。そこで新規用途を開発するための素材として、紅色系と紫色系の馬鈴しょに含まれるANの利用は有色馬鈴しょの需要拡大に期待できる。平成16年度(初年度)の申請目的は有色馬鈴しょANの一般的諸性質であるAN分離と同定、構造、熱・光安定性について検討した。 研究方法:有色馬鈴しょはインカレッドとインカパープルを実験材料に用いた。この各実験材料300gに3%トリフルオロ酢酸(TFA)を加え、一夜4℃放置濾過した。濾液はアンバーライトXAD-7にANを吸着させ、純水で洗浄後、0.3%TFA-メタノールでANを溶出させて、エバポレーターで濃縮乾固させた。エーテル精製後、凍結乾燥により粗AN粉末が得られた。この粗AN溶液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分離し、ANの構造解析を^1H-NMR、FABMSおよびLC/ESIMSにより行った。また耐熱性試験はAN溶液(pH3.16)を90℃、8時間加熱した。耐光性試験は殺菌灯で8時間照射し、それぞれAN残存率で示した。 研究成果:有色馬鈴しょANの含量はインカレッドが0.18%、インカパープルが0.12%であった。それぞれ11種類のANが含まれ、主要ANの構造はインカレッドがペラニン(m/z887.7)、インカパープルがペタニン(m/z933.7)と推定した。^1H-NMRとFABMSによる構造は不純物のため確認できなかった。ペラニンの構成比率は74%、ペタニンは60%であった。インカレッド粗ANの耐熱性は59%の残存率で、インカパープルは36%であった。耐光性はインカレッド粗AN残存率が67%、インカパープルは、ほとんど退色されていた。
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