研究概要 |
3年間の研究計画の第2年次に当たる平成17年度は,これまでに収録・整理された授業データのうち,特に日本の3つの中学校の授業についてさらに多面的・複合的な分析を展開するとともに,アメリカ,オーストラリア,ドイツの授業についても,授業者の教授行動と学習者の行動との関係に焦点を当てた分析を進めた。 1.日本のデータについては,授業内での教授行動と学習行動の連関を特に「自力解決」場面に焦点化して分析するとともに,それらの行動の根底にある教室内の「社会的規範」を,複数の授業観の関係から顕在化する分析を試みた。これらの分析結果を,日本数学教育学会数学教育論文発表会および国際数学教育心理学会年会で発表した。 2.さらに,授業データの多面的な分析のために,授業の進行と生徒・教師への再生刺激インタビューデータとの対応関係を分析し,授業事象ごとの生徒と教師の知覚を対比・分析し,数学科授業における授業事象内の教授行動と学習行動の連関を,この知覚内容の関連からも分析した。その結果,生徒と教師がそれぞれその事象を重要な事象と認識するかが,学習行動と教授行動に強い影響を及ぼすことが明らかになった。 3.他国のデータについては,特に授業の「まとめ」の箇所に該当する授業事象に焦点を当て,それぞれの授業内でのその事象の形態と機能を,教授行動の側から分析した。 4.以上の研究成果の一部については,海外共同研究者とともに,2巻の著書(英文)として出版するための準備作業を進めてきており,平成18年度前半には刊行の予定である。 本年度の研究実績の概要は,以上の通りである。
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