研究概要 |
本研究では、小・中学生を対象としたヴィジュアル・リテラシー育成プログラムを開発し、授業実践を通してその有効性を検討することを目的とする。本プログラムは、これまでの筆者らの準備状況を踏まえ、(1)画像映像メディア分析的批判的視聴リテラシー育成プログラムと、(2)画像映像メディア制作表現リテラシー育成プログラムで構成する。さらに、ヴィジュアル・リテラシーを育成するための授業実践方法に関する現職教員を対象とした同期型と非同期型が組み合わされた遠隔教員研修支援システムを開発し、実践を通して、その有効性を検討することを目的とする。初年度として、次の6項目に取り組んだ。 1.メディア・リテラシー及びヴィジュアル・リテラシーに関する先行研究の分析と諸外国の状況調査 メディアリテラシー教育に関して先進的に取り組んでいるイギリス(連合王国)に焦点を当て、関連する先行研究の精読を行うとともに、平成17年1月31日から2月6日(7日間)の日程で、London大学教育学部、同知識ラボ・子どもとメディア教育センター、BECTA、学習トラストHackney Downs技術と学習センター、John Cabotシティ技術学校、NESTA未来研究所を訪問し、メディアリテラシー、ヴィジュアル・リテラシー、さらに情報教育に関わる活動概要の紹介を受けるとともに、教育研究者、並びに、教育実践者と日本の現状と課題を踏まえた意見の交換と資料収集を行った。 2.映像理解,映像構成理解をはかるために,番組構成から視聴能力を測定する方法の開発と,「意味するもの」を「映像カテゴリー」として分類し,「意味されたもの」を「理解要素」と位置付け,両者の関係に着目した分析的視聴方法を開発した。これを用いて現職教員及び教員養成系の学生に調査を行い,この方法が有効であるという知見を得た。 3.1996年日本賞教育番組国際コンクールでグランプリを受賞した作品を素材に,映像理解,映像構成理解をはかるために,番組読解項目の理解度の調査と「映像カテゴリー」から「理解要素」を見出す分析的視聴に関する調査を,現職教員及び教員養成系の学生に行い,その有効性を明らかにした。 4.小学生を対象として、映像視聴能力と映像制作能力から構成したヴィジュアル・リテラシーを育成するための学習プログラムを開発し、実験的に試行した結果,映像視聴能力と映像制作能力のいずれにおいても有効に機能する知見を得た。 5.小学生を対象として、インターネット活用スキル・ウェブ評価能力・ウェブ表現・コミュニケーション能力の3要素で構成したウェブ・リテラシーを育成するための学習プログラムを開発し、ウェブ・リテラシー尺度調査用紙を用いて、事前と中間の得点を比較した結果、インターネット活用スキル・ウェブ評価能力・ウェブ表現・コミュニケーション能力全てにおいて有意差がみられ、学習プログラムが有効に機能するという知見が得られた。 6.Webサーバ・メールサーバ(Email/BBS環境)・ストリームサーバ(ビデオオンデマンド環境)・情報配信環境の構築による非同期型遠隔教員研修システム(第1版)を設置し、現職教員を対象としてメディア・リテラシー教育に関する遠隔教員研修を支援するために必要なコンテンツを盛り込むことにした。
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