遠隔演奏システムとは、異なる地点におかれている楽器(MIDIに対応したピアノなど)を通信回線で接続し、同時に演奏させることができるシステムである。本研究では、遠隔演奏システムの実用化モデルの考案と、そのモデルの一部を実践し検証することを研究の目的とした。 本研究では、MIDIデータを転送することができる最新のシステム「iSession」(ヤマハ)を使用し、異なる地点におかれている楽器を光回線で接続した。さらに、会場の様子を映像と音声で伝えるためにテレビ会議システムを併用した。これらのシステムを用いた実用化モデルとして、次の3つのモデルを提案した。まず個人を対象とした「遠隔個人レッスンモデル」、次に複数の受講生を対象とした「遠隔音楽講座モデル」、そして、複数の演奏者および聴衆者を対象とした「遠隔演奏会モデル」である。これらの各モデルの実施形態、実施内容、使用楽器について、具体的なプランを考案した。 実践は、(財)ヤマハ音楽振興会音楽研究所の協力を得て、信州大学教育学部(長野)と同研究所(神奈川)を接続して行った。「遠隔音楽講座モデル」は、最先端の自動演奏システムが搭載されたグランドピアノを使用し、遠隔ジャズピアノ講座を継続して実施した。また、電子ドラムセットを使用し、国内初となる遠隔ドラム講座を実施した。「遠隔演奏会モデル」では、遠隔地にいる演奏者とのセッションの可能性を追究した。神奈川で弾いたピアノが、長野のピアノで同時に自動演奏され、そのピアノに合わせてヴィブラフォンを生演奏するという国内初の試みとなった。これらの実践を通して、受講者や参加者のアンケート調査をもとに、遠隔演奏システムを用いた実用化モデルの教育効果などを検証した。また、実践を通して見えてきた課題を明らかにした。
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