研究概要 |
平成16・17年度はオホーツク文化・擦文文化;平成18年度は,擦文文化,続縄文文化,トビニタイ文化,大陸側比較資料に重点をおいて,試料採取と放射性炭素年代の測定を行うた。資料は,札幌市市内遺跡,厚真町内遺跡,枝幸町市内遺跡1常呂町町内遺跡,羅臼町合泊遺跡北海道大学埋蔵文化財調査室所蔵の道央石狩低地帯出土資料,釧路市埋蔵文化財センター所蔵の釧路周辺遺跡出土資料,斜里町埋蔵文化財センター所蔵の知床周辺試料から,臼杵・熊木が選択して採取した。また,広域編年のための大陸側比較試料として,アムール下流域,沿海地方,モンゴルの試料を,ハバロフスク州立博物館,極東工科大学,モンゴル科学アカデミー考古学研究所からの提供を受け,続縄文時代〜アイヌ文化時代の併行期の年代測定を行った。 以上の試料を坂本が、国立歴史民俗博物館において前処理を行い、加速器質量分析研究所等の測定機関でAMS年代測定を行い、さらにその結果を坂本が暦年代補正を行った。測定・補正の終了後、各年度におあいて,研究参加者による結果の検討と,暦年代の検討を行った。本研究では道内においては内陸の遺跡においても,土器付着炭化物に海洋リザーバー効果が現われ年代がかなり古くでることが確認できた。そのため道内試料としては、植物性試料がもっとも効果的であることを確認した。ただし,同一遺構・層位内でも,試料の種類による年代のズレなどが見られ、試料選択の課題が確認された。また,植物試料の測定年代には考古学による想定年代の範囲が含まれ,概ね両者は整合しているが,下限・上限に若干のズレがみられ,考古学的な年代に再検討を要する部分のあることが確認できた。しかし,暦年代の定点として,続縄文前期BC4-AD2世紀、続縄文文化後期AD2〜4世紀,オホーツク文化中期AD5-7世紀、同後期AD6-8世紀、擦文文化終末は13世紀という年代が含まれることが確認でき,暦年代編年の大枠を確立することができたと考えている。また,大陸側との年代とのすり合わせは,まだ比較資料が少なく今後の課題であるが,初期鉄器時代と続縄文文化,擦文文化と初期中世の併行期文化を確認しことは重要な成果である。また,大陸側では海洋リザーバー効果の影響が比較的少なく,土器付着炭化物試料の利用が可能であることを確認し,広域編年の確定にむけた今後の研究の見通しを得た また従来の測定成果を集成し,年代測定結果の集成表・データベースを作成した。
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