研究課題
本年度も、高松塚古墳墳丘部分の含水率の測定、降水量などの微気象観測を継続的に行った。これに加えて、墳丘部の水分移動特性と石室内の湿度の関係を明らかにするために、墳丘部でボーリングにより採取した土の水分特性の測定、熱伝導率などの熱物性の測定を行った。下図には、測定した墳丘土の熱伝導率と飽和度(間隙を水分が占める体積割合)を示している。現在、石室内壁面の生物対策として、墳丘上面と石室下面に冷却パイプを挿入し、墳丘部の冷却を行っている。この冷却方法を決定するに当たっては、次の5つの方法について、冷却効果などの詳細な検討を行った。1)盗掘口から石室を冷却する、2)取合部を冷却することにより石室を冷却する、3)墳丘部に冷却管を設置し、外部から冷却する。4)墳丘部に冷却シートを設置し、石室の外部から冷却する、5)墳丘表層部と石室の下部に冷却管を設置し、石室の外部から冷却する。石室部分の温度変化に関するシミュレーションには、測定された墳丘部の含水率や熱伝導率などの熱物性値を用いた。シミュレーションにより、今後の石室部分の温度変化の状況が予測され、本検討結果を高松塚古墳の緊急的な生物対策の基礎資料とすることができた。次年度は、これらの手法を用い、日本の他の古墳の墳丘部分の水分特性の把握および墳丘内の水分移動に関するシミュレーションなどを中心に研究を進める予定である。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
保存科学 45
ページ: 69-76
ページ: 59-68