研究課題
基盤研究(B)
これまで国内では報告例がなかったが、旧石器時代石器・縄文時代遺構埋土・縄文時代石器・縄文時代珪藻土塊・擦文時代遺構埋土いずれからもデンプン粒を検出することができた。これにより日本のような中緯度温暖湿潤地域でも土壌中に長期間デンプン粒が保存されていることが明らかになった。各考古学資料からのデンプン抽出作業をおこなう一方で、堅果類、根菜類を中心に在来食用植物の対照現生サンプル作成を継続しており、今年度は40件弱作成した。遺物からの抽出方法や取り扱い、同定方法については先駆的研究が行われたオーストラリアよりシドニー大学フラガー博士を招聘し教授を受けた。また旧石器時代および縄文時代草創期に石皿類が多量に出土する南九州で遺物を実見し、研究協力を要請した。さらに残存物の変質・減少過程の解明の検討材料とするため国立民族学博物館所蔵の用途の明らかな食品加工具の表面から残存物の抽出を試みている。食性分析の手がかりとなる炭化物のモデル生成実験をおこなった。15種類の異なる食材を縄文土器に見立てた素焼き土器で薪燃料により煮沸し水分がなくなるまで加熱した結果、それぞれ性状の異なる付着炭化物が生成した。一部を採取して炭素、窒素安定同位体分析をおこなっている。縄文時代において主たる炭水化物源となっていたと考えられ、旧石器時代も利用されていた可能性がある堅果類の加工法の一端を探るため、あく抜きをしていない堅果類と他の食材の混合比率を変えた材料を用意し石蒸しによる調理実験を行い官能検査によって可食化の可能性を検討した。