研究概要 |
(1)エコーチップの原理,測定法,従来の研究例を紹介し,測定範囲について他の試験器との比較・検討を行った.エコーチップの打撃エネルギーはシュミットハンマーの1/200であり,その測定範囲は,従来,地形学で使用されてきたシュミットハンマー,針貫入試験器,土壌硬度計などの簡易強度試験器よりも広く,硬い岩石から脆弱な岩石まで測定できることがわかった.また,室内試験の結果より,エコーチップの反発硬度は,一軸圧縮強度や引張強度と良い相関関係を持つことがわかり,これらを推定する関係式を作成した. (2)宮崎県青島と九州本島を繋ぐ弥生橋(1951年に竣工)の橋脚を構成する積み石(砂岩塊)にタフォニが観察される.この砂岩塊は,潮間帯と海水飛沫帯に位置し,その砂岩塊表面には薄い風化層が存在する.そこで,この砂岩塊に対して,打撃エネルギーの異なる2つの反発硬度試験,すなわち,エコーチップとシュミットハンマー試験を実施することにより,両者の試験結果の比較を通じて,エコーチップが風化による岩石表面の強度低下量の把握に有効かどうかを検討した.その結果,風化岩石の強度の評価には,シュミットハンマーよりもエコーチップ硬さ試験機による計測が有効であることがわかった.また,単打法と連打法の2つの計測方法を用いることにより,岩石表面の風化部と岩石内部の新鮮部の硬度をそれぞれ把握することが可能となることを示した.したがって,両者の測定値を用いることにより,風化による強度低下量を定量的に評価することができる.海水飛沫帯および潮間帯に位置する岩石の表面は,風化により,新鮮な岩石強度の最大67%,76%まで,それぞれ強度が低下することがわかった.このことは,塩類風化作用が潮間帯よりも海水飛沫帯において活発なことを示唆する. (3)鎌倉の「やぐら」内部の石造五輪塔を用い,鎌倉時代から現在までの期間における凝灰岩の風化程度と岩石の強度低下量をエコーチップで計測した. (3)阿武隈山地において,タブレットを斜面に埋設し,その風化量を計測する野外実験をはじめた.
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