研究概要 |
1.大谷石と青島砂岩を含む7種類の岩石と硫酸ナトリウム溶液を用い,塩類風化の室内実験を行った.実験は岩石供試体を溶液に浸したのちに乾燥させて硫酸ナトリウムの結晶を析出させるというサイクルを15回繰り返した.その結果,いくつかの岩石は徐々に風化・破壊していった.その風化速度を弾性波(P波)速度の低下によって把握した.一方で,岩石の物性を計測し,風化速度との関係を吟味した.その結果,岩石中に小さい間隙の量が多いほど,あるいは引張強度が小さいものほど,塩類風化速度が大きくなる可能性が示唆された. 2.同種の岩石における間隙率の差異が塩類風化速度に与える影響を明らかにするために,青島砂岩を用いた室内実験を行った.その結果,1)間隙率が大きいほど塩類風化速度が大きい,2)塩類風化作用によって重量が減少し始めるのは表面強度の値が実験開始前の50-60%程度まで低下したときである,3)塩類風化による表面強度の変化は,使用する塩溶液の種類によって異なる傾向を示す,ことが判った. 3.花崗岩,花高閃緑岩,ハンレイ岩,石灰岩,安山岩,流紋岩,凝灰岩,結晶片岩の8つの岩型を選び,直径4.5cm,高さ1cmのタブレットを用いた野外実験を行った.1岩型15個づつ(8岩型で120個)をナイロン製の網袋に入れたものを4個用意し,それを阿武隈山地の花崗閃緑岩の斜面に埋設した.埋設は風化環境の異なる4地点(地上,腐植土層中:深度15cm,不飽和な風化層中:深度60cm,飽和している風化層中:深度25cm)を選んだ.3ヶ月あるいは6ヶ月ごとに野外から回収し,水洗い後に炉乾燥し,重量を計測した.実験結果として,以下のようなことがわかった.(1)飽和帯における石灰岩が最も風化速度が大きく,3%/yであった.(2)花崗閃緑岩の風化速度はその次に大きく,ほぼ2%/yという値が得られた.(3)飽和帯以外の場所の,石灰岩を除いた風化速度と岩石物性の関係は,以下の式で表された: Rate of weight loss = 0.015e^<36(n/L)> 右辺の指数中のnは岩石の間隙率であり,Lは岩石強度に比例する値であるエコーチップの値である.
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