研究概要 |
1.花崗岩,花崗閃緑岩,ハンレイ岩,石灰岩,安山岩,流紋岩,凝灰岩,結晶片岩の8つの岩型を選び,直径4.5cm,高さ1cmのタブレットを用いた野外実験を行った.1岩型15個づつ(8岩型で120個)をナイロン製の網袋に入れたものを4個用意し,それを阿武隈山地の花崗閃緑岩の斜面に埋設した.埋設は風化環境の異なる4地点(地上,腐植土層中:深度15cm,不飽和な風化層中:深度60cm,飽和している風化層中:深度25cm)を選んだ.3ヶ月あるいは6ヶ月ごとに野外から回収し,水洗い後に炉乾燥し,重量を計測した.実験結果として,以下のようなことがわかった.(1)飽和帯における石灰岩が最も風化速度が大きく,3%/yであった.(2)花崗閃緑岩の風化速度はその次に大きく,ほぼ2%/yという値が得られた.(3)飽和帯以外の場所の,石灰岩を除いた風化速度と岩石物性の関係は,以下の式で表された:風化速度=0.015g^<36(n/L)>右辺の指数中のnは岩石の間隙率であり,Lは岩石強度に比例する値であるエコーチップの値である. 2.上記のタブレット試験と並行して,花崗閃緑岩を試料とした室内溶解実験を行った.すなわち,4つのタプレットを100mlのプラスチックの容器にお互いが接触しないように立て,そこに野外と同じ条件のpH6-7の蒸留水を29±1mld-1を流す流通系の実験をおこなった.温度は20℃であり,撹拌や振とうは行わない.この結果,タブレットの風化による重量損失速度は,2.1×10-5wt%d-1となった.これに対して,野外実験では1.2×10-3wt%d-1となり,野外の方が50倍も風化(重量損失)が速いことがわかった. 3.喜界島には,離水年代既知の完新世隆起サンゴ礁段丘上に,多くの台座岩が形成されている.台座岩は,離水前の礁原に津波で打ち上げられたと思われる巨礫の下部に形成されている.巨礫がその下部を雨水の侵食から保護すると仮定し,台座岩の高さとそれらの形成時間とから,サンゴ段丘を構成する石灰岩の地表面低下速度が計算され,それは6000年にわたり205mm/kyであることが判った.
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