研究概要 |
本研究では、東南極の沿岸部におけるin situ貝化石について、1個体(あるいは1 aliquotや1個体中の異なる部位)毎のESR年代測定を行い、加速器炭素14年代とのクロスチェックを試みた。さらには、氷食作用を被った岩盤やモレーンを構成する礫の宇宙線照射年代、海浜堆積物や氷河・融氷河流堆積物の光ルミネッセンス年代など、炭素14年代測定法以外の手法による新たな年代データの獲得も目指し、東南極沿岸部における第四系に関する年代観の再構築を目指した。そしてこれらのデータをもとに,第四紀後期における東南極氷床の変遷や,それが汎世界的な海水準変動に与えた影響などについて考察した. 1固体毎に測定した貝化石のESR年代は、相対的に新しいAMS^<14>C年代やOSL年代などを示す試料にっいては、整合的な結果を示したが、相対的に古い年代を示すものの中には、やや年代値に開きのある試料も見られた。また、AMS^<14>C年代とOSL年代の比較についても、古い年代の試料で、やや相違のみられる試料があった。 宇宙線照射年代測定の結果は、露岩域の年代のほとんどが、LGM以降の新しい年代値を示す結果となり、AMS^<14>C年代との関係性を議論するために、多くの問題を検討する必要性が示された。具体的には、試料岩石の風化速度の問題や、寒冷氷河底の侵食作用ゐ有無なども考慮した氷床変遷史の解明が必要であることが指摘できる。 以上の結果として、LGMの氷床拡大像には依然として不明確さが残るものの、最終氷期前半の東南極氷床の拡大については、具体的な年代測定値から、その存在を指摘しうることが明らかとなった。
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