研究課題
侵食の激しい日本列島では、鮮新世〜更新世前期に作られた地形はほとんど残っていない。だが、この時期の古地理情報は過去の環境変化から将来を予測するために必要不可欠である。古地理の高精度復元には、全国各地に分布する鮮新・更新世堆積物中から同時間面を多数見いだし、堆積環境の地域的な特徴や変化を読みとることが必要である。同時間面としては、火山の巨大噴火によって短期間に日本全国に降灰した細粒ガラス質火山灰が有効である。本研究では分担して全国各地の鮮新・更新統を地質調査し、ガラス質火山灰層の光学的性質や化学成分(主成分及び微量成分)を詳しく検討し、鮮新・更新世火山灰の層序とそれらの一枚毎の全国対比を行っている。17年度の地質調査は九州の雲仙島原地域、山陰の都野津地域、四国の香川県東部、中部地方の北アルプス周辺、北部フォッサマグナ、上・中越の頸城丘陵、魚沼丘陵、関東地方の多摩丘陵、房総半島地域、東北の仙岩地域で地質調査を行い、層序情報及び多数の火山灰試料を採取し、その分析を行った。北フォッサマグナでは古地磁気観測及びFT年代測定を実施した。この結果、鮮新・更新世火山灰について全国対比が進み、分布や編年、給源火山などが明らかになった。具体的には、都野津層中の火山灰が2.3Maに淡路島〜宇部の西南日本に広く降下した広域火山灰であること、2Maに噴出した東北の玉川溶結凝灰岩R4は、給源が仙岩地熱地域の先焼山カルデラであり、同じ火山灰が関東平野や男鹿半島に分布していることが分かった。また、中部山岳起源と思われるTiが少なく、Fe/(Fe+Mg)比の高い特徴的な火山灰群は4.2Ma〜1.2Maの間にしか存在しないことが分かり、中部地方の広域応力場解明の重要なデータが得られた。来年度は最終年度であり、火山灰の広域対比データを増やすと共に、鮮新・更新世の古地理・地形発達についての考察を行う予定である。
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