研究概要 |
本研究の目的は、黒潮及びその周辺海域(亜熱帯環流域)においてCO_2吸収量を評価し、物理、化学・生物過程(例えば窒素固定)が担っているそれぞれのCO_2吸収能力を評価することである。大気と表面海水の二酸化炭素分圧差は、大気・海洋間のCO_2交換を推進する原動力であり、その時間的・空間的変動は主として海洋物理と海洋内部の炭素・窒素循環により支配されている。海洋内部の炭素・窒素循環とは、化学・生物学的見地からは無機・有機態間の変換過程に他ならない。このことを明らかにするため、本研究では北太平洋西部亜熱帯環流域(137°E及び165°E、10,20,30°N)に観測点を設け、平成16年度より年4回程度、海洋表層から中層に至る炭酸系、粒子の化学成分、無機態及び有機態炭素・窒素の安定同位体比の観測を実施することを計画した。平成18年度は、気象庁観測船「凌風丸」及び「啓風丸」を用い、年4回の航海で、ほぼ予定通り海水試料を採取することができた。またこれらに加えて東大海洋研観測船「白鳳丸」で5〜6月に亜熱帯環流域で海洋二酸化炭素分圧測定や試料採取を行った。得られた海水試料については、溶存無機炭素の炭素安定同位体比測定を先ず行っているが、質量分析計故障のため、若干予定よりも分析が遅れている。北太平洋広域の海洋二酸化炭素分圧の季節変化について衛星データなどを用いて評価し、広域での大気・海洋間の二酸化炭素交換量を評価した。このことにより、黒潮及び続流域での大きな吸収フラックスを明確に示すことができた。また、海洋二酸化炭素分圧の経年的な増加について冬期に着目して解析を行なうと共に、季節変化の海洋側、大気側のそれぞれの要因についても解析した。これらの結果は、国際誌に投稿し、印刷された。
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