本研究は、北西部太平洋域において、最終氷期の亜間氷期に起こったメタンハイドレート層の不安定化に伴うメタンの大気環境への突発的な負荷による急激な温暖化に関する正確な評価方法の検討を行い、堆積物に残されたシグナルの評価方法とそのシグナル強度が、どの程度のメタンの負荷によるものなのか、または、堆積後の続成過程により、微生物により現場で新たに生成されたものなのかについて明らかにすることを目的としている。 本年度は、主に分子レベル14C測定のためのターゲットとするバイオマーカーの探索・定量に関する予備実験を実施した。特に、上記の研究目的を達成する為に必要なコア中の微生物群集からのRNA抽出方法の検討ならびに抽出したRNAから選択的に特定微生物群集のRNAを選択・濃縮する手法に関する検討を行った。基準試料となる各微生物種(純菌)の培養を継続的に実施し、同位体比分析用試料の蓄積を行った。また、本研究の鍵であるバイオマーカーとなり得る脂肪酸やRNA分子を破壊することなく直接同位対比測定を行うために、有機物の直接同位対比測定が可能な有機マスのシステムを構築した。本装置は、高感度の液体クロマトグラフィーを接続した質量分析計から構成される。装置構築後、培養細胞由来の標準RNA分子等の実測実験を開始し、測定データを蓄積した。さらに、加速器質量分析計(AMS)による分子レベル14C測定を高精度で分析するために必要な、分子レベルの炭素安定同位体比による補正に関するシステムを現有の安定同位体比質量分析計(内田所有)に取り付け、予備実験を開始した。
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