研究概要 |
グローバルな気候変動を的確に捉えるためには海洋の表層における炭素循環を把握することが重要である。海洋の表層での植物プランクトンの活動は炭素循環に重要な役割をしている。植物プランクトンの生態は乱流・混合過程と密接な関係があることは明白であるが、植物プランクトンの微細な分布と乱流場との関係は明らかにされていない。本研究の目的は植物プランクトンの微細な分布を乱流に関係する物理量と共に計測し、その関係を明らかにすることである。さらに、第二の目的として植物プランクトンの微細な分布状態と動物プランクトンの摂餌行動の関係を水槽実験により究明することである。 植物プランクトンの微細な分布状態を観測するためにLEDを用いた蛍光光度計はすでに開発済みであったが、その空間解像度が不明であった。そこで空間解像度の分かっている超高解像度水温計(FP'07)を利用し、小型LED蛍光光度計の空間応答関数を推定する実験方法を考案した。現在、この方法に関する論文をJ.Atmos.Oceanic, Technol.に投稿中である。次に、解像度をさらに向上させるため青色ダイオードのレーザー光を利用した新たな超小型蛍光光度計を設計し、開発を行った。このレーザー蛍光光度計の空間解像度を検証するため、LED蛍光光度計と同様の水槽実験を行い、その解像度が2mmであることが分かった。この蛍光光度計は技術的に優れていることが判明したので、現在、特許の申請を行っている。 これら2タイプの蛍光光度計を用いて乱流中の植物プランクトンの分布を計測するため、乱流計測用シェアープローブを2本搭載した新たなTurboMAP-Lを設計し、開発を行った。はじめての現場実験を琵琶湖で行い、現在、取得データを基に測器の性能を検証しているところである。さらに、第二の目的である摂餌行動にかんする水槽実験を行うため、植物プランクトンの薄い層を2層に成層した境界面に作成することに成功した。
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