研究概要 |
本研究の目的は植物プランクトンの微細な分布を乱流に関係する物理量と共に計測し、その関係を明らかにすることである。そこで昨年度は植物プランクトンの微細な分布状態を定量的に把握するために、アレック電子が開発した小型LED蛍光光度計の空間解像度が2cmであることを明らかにした。本年度はその研究結果をWolk, Yamazaki, Li and Lueck(2006)に発表した。この蛍光光度計の空間解像度及び応答関数が明らかになったため、乱流スペクトルとクロロフィルスペクトルが近慣性領域において-5/3乗則が同時に成立することを初めて立証することに成功し、この研究成果をYamazaki, Mitchell, Seuront, Wolk and Li(2006)に発表した。さらに、空間解像度を高めるため青色ダイオードのレーザー光を利用した新たな超小型蛍光光度計を設計し、開発を行った。LED蛍光光度計と同様の水槽実鹸を行なって技術的な特性を明らかにし、特許の申請を行なった。これら二つのタイプの蛍光光度計を搭載した、微細構造観測装置(TurboMAP-L)の開発も行い、植物プランクトンの多い東京湾口や相模湾などでデータを取得することに成功した。また、相模湾に設置された人口湧昇発生装置「拓海」から放出される放流水に蛍光染料(ウラニン)を添加し、放流水の混合状態を検証した。LEDとレーザーの発光特性の違いを利用するとウラニンを自然蛍光から分離することが出来ることがわかった。さらに、近慣性領域においてウラニンと乱流速度のスペクトルが-5/3乗則で現れることを確認し、Yamazaki et al. (2006)と整合性のある結果であることがわかった。さらに、放流水は完全に混合されていないため対流現象を伴いながら広がっていくことが確認された。この対流現象を理論的に検証するため浮力によって引き起こされる乱流現象のDNSによる数値実験を行い、この成果をHwang, Yamazaki and Rehmann(2006)に発表した。
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