地下水の滞留時間と地下水起源ならびに地下水の混合と気候変動の関連について情報を得るために、浅層と深層の地下水調査が可能で比較的大きな地下水盆を有す帯広平野を現地調査の対象に選定した。今年度は、20箇所の既存井戸から地下水を採取し、地下水年代年代情報を得るために溶存希ガスと宇宙線起源の^<36>Cl測定、また地下水起源の情報を得るために安定同位体を測定した。地下水循環の天然トレーサーとして希ガス濃度およびその同位体と^<36>Cl/Cl比を測定し、浅層地下水は宇宙線起源の^<36>Clを含み、深層の塩分濃度の高い温泉水には宇宙線起源^<36>Clがほとんど含まれず滞留時間がかなり長い地下水で、数十万年以上経過した地下水であると推定される。また、この温泉水には、帯広平野の北に位置する火山からの影響をほとんど受けていない可能性が高いこと、さらにその起源は深部に存在する地層からの絞りだしを示唆する情報を得た。今後は、さらに調査対象地域を広げ、地下水の混合と水収支の収集を図り、水理地質データとの整合性を含め、気候変動における地下水の寄与について定量化を試みる。 従来、用いられてきた溶存無機炭素^<14>Cによる地下水年代測定法の欠点を克服するため、溶存有機物の^<14>C測定による地下水年代測定手法の開発を目指し、地下水中に含まれる低濃度有機炭素を効率良く回収でき、かつ"モダンカーボン"による試料の汚染をできるだけ少なくできる処理法の検討を行った。処理法については、地下水試料からの有機物の回収と有機物の年代測定とに分けて開発を進めた。有機物の回収法の検討として有機物濃度の高い表面水を用いた予備実験を行い、十分高い有機物の回収量を得ることができた。表面水試料を希釈し有機物濃度を低下させた模擬地下水からの有機物回収の検討を開始した。年代測定には加速器質量分析計を用いることで目的を達成できることを確認した。今後は、地下水の実試料を用いた検討を行う予定である。
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