研究概要 |
非常にゆっくりとした深部地下水の滞留時間を推定するために必要な天然長半減期核種である^<36>Clの測定手法の検証を、世界的に実績を持つ3機関(ANU, ETH, Purdue)において行った。溶存^4He濃度と^<36>Cl濃度の相関を基に、地下水中に蓄積してくる^4Heの蓄積速度を求め、地下水中の過剰^4He濃度を基に、100万年を超える地下水の滞留時間を推定する手法の提案と滞留性の高い化石水の判定基準と手順の提案を行った。 人間活動において最も重要な淡水資源は、河川水や比較的浅い循環速度が数ヶ月から1000年程度と比較的速い地下水である。数年から数十年と短い地下水の滞留時間は、^3H+^3He年代測定によって正確に推定が可能である。一方、100〜1000年の滞留時間を測定する手法としてまだ適切な手法が提案されていない。この研究の中で、地下水中に溶存する^<228>Ra/^<226>Ra放射能比を基に推定する手法の開発を行い、柿田川での研究事例や温泉データとの比較評価を通じて手法の検証を行った。 種々の環境放射能や希ガスを天然トレーサーとして活用した地下水年代測定法を駆使して、地下水の滞留時間を測定・評価した。測定された滞留時間の違いを基に、地球規模の水循環を考えた場合、淡水資源の大部分を占める河川水の基底流量を含め浅層地下水の多くは、数ヶ月から数十年程度の時間遅れで地球規模での水循環に寄与している。一方、深部地下水中で密度の高い高塩水の滞留時間は、数十万年から数百万年にも達し、地球規模の水循環から殆ど隔離され極めて停滞性が高い。ただ、地下水の深度のみによって地下水の流動性が規定できるわけではなく、流動水と停滞水の形成には、地下水盆形成の歴史と地下水盆の構造が深く係わっていることは否定できない。
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