福井県若狭地方から山口県にかけての日本海側ならびに山口県西部瀬戸内海川側に流出する二十数河川の調査を行った。溶存態の主要・微量元素ならびに栄養塩、懸濁態の主要・微量元素と植物色素を分析した。結果は現在解析中であるが、これまでに行ってきた太平洋側流出河川の結果とも併せて次のような成果が得られた。懸濁粒子中の元素の測定結果に基づくと、多くの元素についてその元素濃度とアルミニウム濃度との間に良い直線相関があることが分かった。すなわち、河川懸濁物の起源である地殻において、各元素とアルミニウムとの存在比は多くの元素について、試料を採取した地域に関わらず全国に渡ってよく似た値にあることが明らかになった。元素濃度対アルミニウム濃度の図の線形回帰直線の傾きから、河川集水域での平均元素存在比を算出した。これらの値の中には、地殻の平均元素存在度の一つであるクラーク数から求めた比とはかなり違ったものもあり、元素によっては日本での平均値が世界のものと異なっていることが明らかになった。この成果について、「淡水中の懸濁粒子」ぶんせき:412-414(2004)の論文を著した。 岡山県北部に建設中であった苫田ダムが完成し、2004年から湛水が始まった。このダムからの流出水について、長期のモニタリングを開始した。また、2004年12月に現地に赴いて、ダム湖の水質について調査した。水と懸濁粒子についての分析項目は基本的に河川の調査と同じで、結果については現在解析中である。
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