研究概要 |
2005年4月下旬から6月上旬にかけて、琵琶湖東岸彦根沖に向かって水深10mから60mの間に観測線を設け、各種環境パラメータと栄養塩濃度の鉛直断面を描いた。昨年同様に、5月初旬に水深20m付近からアンモニアの亜表層極大が認められるようになり、5月下旬にはこれが沖にまで認められるようになった。同時に行ったボトル実験では、それぞれ0,5,10,20,30mから採取した湖水を現場の光温度環境でインキュベートし、アンモニアの変化率を測定した。有光層であった10m以浅では暗黒下では生物起源と思われるアンモニア濃度の増加が認められたが、20-30mではそのような増加傾向は見られなかった。この結果は、20m付近のアンモニア極大が生物起源でないことを示し、沿岸の堆積物起源である可能性を示唆した。また、PAM法による光合成活性の測定によって、代かき水が流入する以前には表層で光合成活性が低下していたのに対して、代かき水が流入した直後にはこの表層で見られたリン欠乏が解消されていることが分かった。これらのことは、代かき水の流入が植物プランクトン生産を促進している可能性を示唆するが、代かき水中の懸濁物質はいったん沿岸域に堆積した後に、内部波などによって撹乱され、そこから栄養塩が供給されていることが考えられた。 同時に行った湖底堆積物の調査は、このことをよく説明した。堆積物のC/N比は、より沿岸に近い地点ほど高くδ^<15>Nは逆に低かった。これは沿岸ほど陸起源物質が多く堆積していることを示すものであり、セジメントトラップの結果もこのことを支持した。沈降粒子のδ^<15>Nは、やはり沿岸ほど低く、代かき直後の値は、11月の降雨直後の沈降粒子のそれに比べても低かった。セストンのδ^<15>Nは4月中旬にはどの深度でも同様の値であったが、代かき以後には表層で低下した。湖底堆積物表面からの栄養塩の潜在的な供給量を測定すると、アンモニアの供給量は5月の水深10m地点で最も高かった。これに対してリン酸塩の供給量はどの水深の地点でも変わらず、さらに5月でも11月でも同じ程度であった。
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