研究概要 |
2003年3月に打ち上げられたGRACE衛星は、地球表層の大気・海水・氷床変動を重力変動の観点から明らかにすることを目的とした衛星である。本研究の目的は、極域で取得された地上検証データを用いてさまざまな時定数の重力変動を検出し、GRACEデータの示す変動とつき合わせ解釈することであるが、(1)従来データの解析でわかった知見、(2)新たな測器を設置しデータを取得する、の2パートから成る。(1)については1999-2003年のVLBIデータ解析から昭和基地、オヒギンズ基地の地殻隆起速度がそれぞれ4.6±2.2mm/yr,4.5±0.7mm/yrと求められ(Fukuzaki et al.,2005)、昭和基地の値はGPSによる沿岸露岩域の結果より若干大きく(Ohzono et al.,2006;Earth Planets Space in press)、結果の違いの検討が必要なこと、絶対重力測定による10年間の重力減少は-0.27μGal/yrで、VLBI/GPS隆起とセンスは調和していて(Fukuda et al.,IAG Symposia,129,280-285,2005)kinematicsによる結果との比較が可能になったこと、などが上げられる。一方、(2)も大きな進展が見られた。(66°51'S,37°49'E,水深4600m)のOBP地点に2台の海底圧力計を設置し、1台は2005年2月に回収されたが、残置されていたもう1台も2006年2月に回収し14ヶ月間という長期データが得られた。予備解析により、昭和基地という沿岸部とOBP地点のopen seaでは分潮振幅に相違が見られ、海洋潮汐モデルの更新が必要になろう。一方、湧出量計についても、リュツォ・ホルム湾氷海下で800m深度までの実績が得られ、現在解析中である。さらには、昭和基地周辺域360,000km^2において航空機測量により、重力、地磁気、氷厚、氷床表面地形の4点セットデータが得られたので、GRACE変動場の基準になる静的重力場が精度良く決まることが期待される。
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