研究概要 |
本研究の目的は、測地学的な地上検証データとGRACE衛星(2003年3月打ち上げ)の重力データを対照させ、南極域での大気・海洋・氷床変動に伴う重力変動を検出し解釈することである。1999-2003年のVLBIデータ解析から昭和基地の地殻隆起速度は4.6±2.2mm/yrと求められ(Fukuzaki et al.,2005)、GPSによるリュツォ・ホルム沿岸露岩域の結果(1.4±0.2mm/yr ; Ohzono et al., 2006)より大きいこと、DORISによる値はAmalvict et al.(2007)による再解析で3.61±0.21mm/yrと求まり、3種の宇宙測地の比較が明らかになった。絶対重力測定によると、昭和基地での重力減少は-0.27μGal/yrであり(Fukuda et al.,2006)、Makinen et al.(2007)が示すとおり、後氷期地殻隆起モデルの規正に使用されよう。小西ら(2007)は過去17年分のJARE海上重力計データの統一的ドリフト補正を行ったので、昭和基地周辺域360,000km^2において行われた日独航空機重力観測データによる重力異常図を基礎に、staticな地域重力場モデルの精度はさらに向上することになり、南極域での水循環によるdynamicな重力変動の詳細解明につながるだろう。一方、(66°51'S,37°49'E,水深4600m)地点に設置した海底圧力計(OBP)には2004年12月26日発生のスマトラ地震津波が明瞭に記録されていて、水位変動による超伝導重力計や広帯域地震計への荷重効果(Nawa et al.,2007)が示された。さらに、OBPデータから潮汐成分を除去した時に残る長期圧力変動(2年分データ)振幅と、GRACEによる月平均重力変動振幅は同位相であることもわかってきた。湧出量計についても、第46次越冬隊の手によりリュツォ・ホルム湾氷海下で800m深度での測定実績が得られ、南極域においても中緯度での測定と同程度(10^<-8> to 10^<-6>m/s)の湧出量が得られることが判明し、これら新しい測器展開の有効性が立証された。
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