研究課題
本研究の目的は、レーザースペックルを利用した統計干渉法を応用・発展させることにより、植物の成長やそれに伴う変形などの活動状態を総合的にモニタする高感度なシステムを開発することにある。植物の成長などの活動状態に関する情報は植物表面からの散乱光成分に含まれており、統計的干渉法により観測を試みた。環境条件や環境汚染が植物に与える影響をモニタリングする技術を確立することを目指している。代表的な大気汚染物質としてオゾンに注目し、対象植物としてニラの葉の生長計測および外性菌根菌に感染したアカマツの根の生長計測実験を行った。統計干渉法は非常に感度の高い干渉法であり、これを用いることにより植物の葉や根の生長を、葉の1mmの区間において1秒という高い時間分解能で、サブナノメーターの葉の伸長を計測することに成功した。日本の光化学スモッグ注意報の発令基準であるオゾン濃度0.12ppm前後のオゾン暴露に対して植物の成長速度が敏感に反応し、暴露後数分間でその成長速度が大きく影響を受ける様子を明らかにした。これまではこのような高い時間分解能で植物の挙動を計測する手段がなかったため、これまで知られていなかった植物の挙動が種々明らかになった。その一つとして、植物の成長速度は一定ではなくナノメータスケールで大きく揺らぎながら生長していることが明らかになった。さらに、濃度の異なるオゾン暴露実験によりこの生長のナノメータ揺らぎが植物の活性状態を強く反映していることが明らかになった。本研究では、植物の活性状態のモニタ法として既に確立している植物の光合成速度を測定することにより植物の活性状態の比較検討を行った。その結果、光合成速度にはほとんど影響を及ぼさない程度の微弱なオゾン暴露に対しても本光学測定法によると大きな変化として検出可能であり、生長のナノメータ揺らぎに基づく植物を通した環境評価法への可能性が示唆された。
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