研究概要 |
地球温暖化が海洋生態系に及ぼす影響をもっとも敏感に反映すると考えられる細菌は、同時に生態系の基盤を構成する物質循環の主要な担い手である。平成16年度に引き続き駿河湾において水温の変化が細菌群集に与える影響を明らかにするための研究を進めた。継続観測の結果から、水温と海水中の全細菌数との間に正の相関があることが見いだされた。また、真正細菌(domain Bacteria)全体を検出する遺伝子プローブをもちいた結果、水温とdomain Bacteriaとの間にもやや正の相関があることが示唆された。昨年度、擬似現場培養法による培養実験からγ-Proteobacteriaが、5℃あるいは10℃の温度上昇に対して増殖速度を大きくする傾向があることを明らかにしたが、現場観測からは水温とγ-Proteobacteriaと野間には相関を認めることはできなかった。これらについては、現在、Planktonic bacterial population dynamics in coastal environmentと題する論文を作成している。 本研究で特にターゲットとするコレラ菌(Vibrio cholera)については、2005年8月2日に採取した清水港表層海水サンプルにおいて、PCRによるV.choleraeの検出を試みた。PCRにはV.choleraeの16S-23S ITS領域に特異的であり、近縁種のV.mimicusを検出しないプライマー(Chun et al, 1999)を用いた。通常のPCRおよびSYBR Greenを用いたリアルタイムPCRの両方でV.choleraeは検出されなかった。V.cholerae株を用いて検出方法の改善の検討を進めている。
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