研究課題
有機スズ剤および代替防汚剤を含む船底塗料廃棄物による海洋環境汚染の予防を目指し、これら廃棄物が意図的・非意図的に底質に移行した場合の底質中での有害性を評価し、環境管理に資することを目的として研究を実施し、以下の成果を得た。1.底質中防汚剤のHPLC分析法の開発セミミクロHPLCシステムを用いた防汚剤Triphenylborane pyridine(TPBP)の分析法を確立した。TPBPを含む海水に有機物量の異なる3種類の底質を添加して上澄中のTPBP濃度を経時的に測定した。TPBPは有機物量に応じて底質に迅速に吸着し、48時間以降は底質の有機物量に関わらず上澄から消失した。2.底質の毒性評価大阪湾および岩手県大槌湾から採取した底質58試料の毒性を、前年度開発した海産藻類試験により評価した。また、底質の水分含量、有機物量、粒径分布を測定した。これら底質の物性と毒性との相関分析により、毒性は有機物量と正の相関を示すこと、粒径10μm以下の粒子の有機物量が高くかつ毒性が高い傾向を示すことを見出した。特に、有機物量が8%以下の砂質の底質には毒性が認められなかった。毒性を底質中の単一の重金属濃度と関連付けることはできなかったので、毒性の原因物質は有機性有害化学物質であると考えた。3.塗料廃棄物からの防汚剤の溶出挙動練習船深江丸の修繕時にサンドブラストによって船体から除去された船底塗料廃棄物を海水と混合して暗所で1ヶ月間静置し、海水の毒性を経時的に評価した。海産藻類への増殖阻害率は経時的に増加し、14日目以降は強い阻害を持続した。海水には防汚剤としてイルガロールおよびジウロンが検出され、これら2種類の防汚剤が海水に溶出し、暗所で分解することなく存在したために藻類増殖阻害を生じたことが示された。
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Antifouling Paint Biocides, The Handbook of Environmental Chemistry(Springer) Vol15, Part0
ページ: DOI:10.1007/698_5_055
神戸大学海事科学部紀要 第2号
ページ: 79-86