1.底質中における防汚剤の運命の評価 新規防汚剤Triphenylborane Pyridine(TPBP)について、OECDの手法に従って土壌吸着平衡定数を算出した。強熱減量の異なる3種類の底質を用いて、16時間振とう後の溶液中のTPBP濃度の変化をもとにして底質への吸着性をスクリーニングした。塩化カルシウム水溶液中でのKocはいずれの底質でも約100と算出された。一方、海水中では砂底質でKocが約2000と産出され、強熱減量の高い2種類の底質では16時間後に検出限界以下となったことからKocを算出できなかった。このようにTPBPは高塩濃度下において高いKocを示すことから、海底底質に極めて迅速に吸着することが示された。また、水中でのTPBPの加水分解性を評価したところ、pHが中性からアルカリ性では親化合物は約80%が分解し、分解産物としてフェノールおよび未知物質#1を生成した。これらの分解産物は太陽光近紫外線照射による光分解でも生成し、加水分解時よりも高濃度で生成した。 2.底質の毒性評価 海産発光細菌Photobacterium leiognathi SBを用いたTOX Screen 2試験を用い、4種類の希釈液(抽出液)が化学物質(トリブチルスズおよび塩化銅)および港湾部で採取した底質の毒性に及ぼす影響を評価した。トリブチルスズの毒性は、希釈液としてPro-Organic bufferを用いた際には、海水を用いた際よりも1000倍程度感度が高く、塩化銅でも同じであった。6種類の港湾部底質の毒性もPro-Organic Bufferを用いて抽出した際には検出できたが、天然海水や人工海水、Pro-Metal Bufferを用いた際には毒性は検出できなかった。底質の強熱減量が高い試料は毒性も高い傾向にあった。
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