研究概要 |
千浦は,Aquifex sp由来ST-VPにより得られた形質導入大腸菌株(ST-E-trans)生産粒子(STEVP)が広宿主域を発現する原因究明の為,該粒子をE.coli DH5α(ΔlacZYQ-argF relA1 recA)に感染させ,ΔlacZ-argFの元栄養性回復を指標として得た形質導入大腸菌株(DH-lac-trans)にlog期から粒子生産が行われる事,粒子関連DNAはplasmid状に細胞質に浮遊する事を確認し,この粒子関連DNAを河原林と共同してmolecular cloningし,粒子生産遺伝子の特定を試みた.その結果,粒子特定遺伝子の特定には到らなかったが,遺伝子配列として欠損遺伝子部分以外の大腸菌染色体遺伝子配列がほぼ同一頻度で得られた.この結果は,Aquifex spやST-E-transからrecAが導入されたのか,粒子自身に組換えを担当するrec相当遺伝子が含まれている可能性を示唆するが,その起源の特定には到っていない。しかし,この結果から,これまで状況証拠であった広宿主域遺伝子伝達粒子による水平遺伝子伝達が,遺伝子の物質的実態を伴っている証拠が初めて得られた. Ridgeは,共焦点レーザー顕微鏡を用い,粒子生産過程の細胞生物学的観察技術開発を試みた. 河原林は,本研究で対象とする粒子由来遺伝子が単離された場合にその機能を解明する手法を開発するモデルとして,超好熱古細菌ゲノム情報由来遺伝子の発現・機能解析に取り組んだ. 久留主は,枯草菌由来耐熱性分子シャペロンgroELを用いてsingle-ring mutant GroELを構築し,枯草菌GroEの基質28種類を同定した.同定した中の機能既知タンパク質に関しては,AhpCのみが大腸菌GroEの基質として報告されており,好熱菌Thermus thermophilusで報告されたものは無かった.さらに,基質蛋白質とGroEL(大腸菌と枯草菌由来)の結合能等を生化学的手法により解析し,枯草菌RecAタンパク質を基質とした場合に特異性を見出した.このような結果はこれまで報告されていない. 杉立は国際学会にて好熱菌高温体制が中温菌にVPにより伝播する事を発表した.
|