研究課題
低線量の放射線被曝による生物効果や放射線マイクロビーム照射装置の開発により、ゲノムDNAが直接的な損傷を受けない場合でも、細胞は様々な放射線の影響を感受していることが、近年、示唆されてきた。なかでもマイクロビーム照射装置の開発により、直接放射線の被曝を受けなかった周辺の細胞においても、放射線の影響を感受し、様々な生物応答に至るバイスタンダー効果が存在することが知られてきた。本研究では、主に重イオンマイクロビーム照射装置を用いて、線虫の生殖細胞形成における放射線照射の影響、特にDNA損傷の修復、アポトーシス、そしてバイスタンダー効果に関する分子機構について解明することを研究目的とした。これまでの研究成果として、線虫に、種々の放射線、(γ線、重イオン線、個体表層のみの重イオン線、直流強磁場)を照射し、DNAマイクロアレイを用いた全ゲノム遺伝子に対するそれぞれの応答性について解析を行った。その結果、放射線照射により発現が有意に上昇する遺伝子、磁場に応答する遺伝子、γ線に比べ重イオン線でより優位に発現上昇する遺伝子などをそれぞれ見出した。また、ヒト原ガン遺伝子abl-1の線虫における欠損変異体では、放射線照射時にアポトーシスを高頻度に誘導することが報告されていたので、線虫abl-1の欠損変異体を用いて、同様に、放射線照射時の遺伝子発現について綱羅的な解析を行った結果、これらアポトーシスの誘導因子のさらなる発現上昇が確認されるとともに、p38MPKを介した応答や活性酸素の発生などに関わる幾つかの分子で、abl-1の欠損変異体においては、発現が有意に低下する現象を確認した。また、放射線は細胞に活性酸素障害を与えることも予測されるので、ミトコンドリア障害時の発現変動との相関についても比較解析し、ゲノムレベルでの各種放射線応答の理解を深めた。
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Experimental Cell Research(Highlight in this issue) 314
ページ: 103-114
Bioelectromagnetics (In press)
JAEA-Review 2007-60 060
ページ: 112