研究課題/領域番号 |
16310037
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
加藤 昌志 中部大学, 生命健康科学研究所, 教授 (10281073)
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研究分担者 |
神林 康弘 金沢大学, 医学系研究科, 講師 (20345630)
荻野 景規 金沢大学, 医学系研究科, 教授 (70204104)
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キーワード | ヒ素 / RET / チロシンキナーゼ / ERK / 癌 / スーパー活性化 / ゼラチン分解酵素 / スーパーオキサイドディスミュターゼ |
研究概要 |
世界各地で飲用水のヒ素汚染が大きな問題となっている。バングラデシュや西インドでは、ヒ素誘発癌の潜伏期が過ぎようとしており、癌患者が爆発的に増加し始めている。ゆえに、早急にヒ素が癌を誘導する機構を解明し、予防・治療方法を確立する必要がある。 本研究では、ヒ素が、癌遺伝子産物であるRETチロシンキナーゼをはじめとするシグナル伝達分子をどのような機序で活性化するのかについて調べ、以下のような知見を得た。 1) ヒ素は、遺伝子変異により、すでに3-10倍活性化されているRET癌遺伝子産物(RET-MEN2A, RET/PRC1)の活性をさらに3-10倍活性化(スーパー活性化)した。 2) RET/PTC1分子の細胞内ドメインに存在する6個のシステインのうち、特にCys376を標的として作用し、RET分子の二量体形成を促進することにより、RETキナーゼの活性化を促進した。 3) ヒ素は、活性型のゼラチン分解酵素分泌を促進した。この作用には、ERK分子の活性化とMMP-14の蛋白質発現増加が関与している。 4) RET分子の活性にはTyr905およびTyr1062のリン酸化が重要であることが報告されている。ヒ素は、Tyr905およびTyr1062のリン酸化を促進する。 5) ヒ素により誘導されるRETキナーゼの活性化を、スーパーオキサイドディスミュターゼ(SOD1)によって抑制することはできなかった。 次年度は、これらの機序解析の結果から、ヒ素誘発癌に対する新しい予防・治療薬の開発をめざす。
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