研究概要 |
内分泌撹乱化学物質は、内在性ホルモンの合成から受容体に至るステップのいずれかに影響を与え、本来行われるべきホルモン作用を撹乱するものと考えられる。いままで、甲状腺ホルモン輸送に関わる血漿タンパク質(トランスサイレチン,TTR)および核内受容体を標的として甲状腺ホルモン結合を競合阻害する化学物質を同定した。しかし、これらの実験は精製蛋白質を用いておこなわれため、実際の細胞でこれらの甲状腺系撹乱作用が再現できるかという疑問があった。また、ステロイドホルモン系の撹乱におけるほど、受容体を標的とした化学物質が見つかっていないのが現状である。そこで今年度は、レンチウイルスを用いてアフリカツメガエル培養細胞へ、甲状腺ホルモン応答配列とその下流にルシフェラーゼ遺伝子を導入し、安定したホルモン応答を示す培養細胞株の樹立を試みた。本細胞にはマーカーとしてEGFP遺伝子も導入したが、EGFPの発現とホルモン依存性のルシフェラーゼの発現は必ずしも対応しなかった。また、哺乳類の細胞に比べて、長い細胞培養を行うと安定した発現ではなかったため、高発現する細胞株のクローニングを行った。得られたクローン細胞は10^<-11>Mの甲状腺ホルモンに応答した。また、数ヶ月の継代培養においてもホルモン応答を維持した。現在、上記のTTRや核内受容体へのホルモン結合を阻害する化学物質や甲状腺系を撹乱する可能性が示唆されている化学物質を用いて、これらのアゴニスト活性およびアンタゴニスト活性を検討している最中である。
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