研究課題
平成18年度はノニルフェノール等のアルキルフェノール類や多環芳香族炭化水素(PAHs)等の生物濃縮特性を解析した。ノニルフェノ等のアルキルフェノール類は、主に非イオン系界面活性剤であるアルキルフェノールエトキシレートの原料として用いられているほか、洗剤、油性ワックス、ゴム助剤および加硫促進剤などにも利用されている。PAHsは化石燃料の燃焼及び石油製品に由来し、強い発癌性を示すものも含まれる。よって、これらの人工化学物質の浅海域生態系における濃度や生物濃縮過程を明らかにすることは重要な研究課題である。そこで東京湾奥部からミドリイガイ、コウエンヒバリガイ等の貝類やケフサイソガニ等を採集しアルキルフェノール類、PAHs、窒素安定同位体比(δ^<15>N)及び炭素安定同位体比の分析に供した。分析の結果、東京湾奥部で採集された全ての生物試料からアルキルフェノール類やPAHsが検出された。しかし、PCBsやDDTs等の有機塩素化合物とは異なり、アルキルフェノール類やPAHsは食物連鎖の上位の生物でも濃度が増加せず、δ^<15>Nとは有意な負の相関関係があった。これらの化学物質はオクタノール・水分配係数が低く5.5以下であるために、脂溶性が低く生物濃縮しないものと考えられた。以上の人工化学物質に加え、ベトナム・メコンデルタより採集した各種の生物試料を基に21種の微量元素の分布特性及び生物濃縮特性を解析した。微量元素のうちδ^<15>Nとの間に有意な正の相関が認められたのは、セレン(Se),ルビジウム(Rb)及び水銀(Hg)のみであったが、いずれも有機塩素化合物よりも生物濃縮の割合は低かった。
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Proceeding, 3rd International Symposium on the Development of Water Resource Management System in Mekong Watershed
ページ: 121-124