研究課題
基盤研究(B)
本実験では、催奇形性に関する研究で得られた結果と同様、放射線発がん過程でもp53遺伝子が正常だと、低線量反復照射では損傷細胞の修復や排除がほぼ完壁に行われ、生涯を通じがんは発生しにくく、一方、同条件照射でp53遺伝子ノックアウトマウスにはがんが頻発すると想定した。しかし本実験では、I)ノックアウトマウスで生涯を通じ放射綜誘発がんはできなかった、II)ヘテロマウスで正常マウスより発がん率の上昇と発がん開始時期の早期化がみられた。I)の結果から、本実験のノックアウトマウスは遺伝的バックグランドがC57/BLマウスで、胸腺腫やリンパ腫を生後早い時期から自家発生し、放射線発がんの潜伏期がこの自家発生腫瘍よりも長いため、自発腫瘍発生に先を越され放射線発がんが観察できないと考えられた。一方、ヘテロマウスでは正常マウスと比べ発がん率の上昇と発がん開始時期の早期化がみられたので、p53遺伝子産物の量的な違いあるいは存在状態が放射線発がん過程に影響を与えていることが明らかになった。また、ヘテロマウスでは正常マウスと比べp53遺伝子の高頻度なLOHが認められた。ホモ接合状態の遺伝子では片方が欠失したり、片方に突然変異が起きヘテロ接合状態になると、正常な遺伝子が高頻度に欠失することが知られるが、本実験のヘテロマウスでは反復β線照射による刺激により残りのp53遺伝子が欠失し、照射部位細胞がノックアウト状態になることで、発がんへの確率と時間の短縮がひきおこされたと考えられた。一方正常マウスでLOHがあった時、残ったp53遺伝子に突然変異があるので、反復β線照射による刺激により片方のp53遺伝子に突然変異が生じ、正常のp53遺伝子のほうが欠失したと考えられた。ただしこの時、発がん過程に2段階を経ることと、また、突然変異のみでがん化した場合も突然変異の発生確率が低いことから発がん時期が遅くなったり、発がん率が低くなったのであろうと考えられた。
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1 3th International Congress of Radiation Research, San Francisco, USA.
The 51th Annual Meeting of the Japan Radiation Research SocIety, Makuhari, Chiba.
The 144th Annual Meting of Japanese Society of Veterinaly Science, Ebetsu, kkaido.