研究概要 |
本年度は以下の4点に焦点を絞り研究を進めた。 1.OHラジカル生成機構の解明 水中で二酸化チタン微粒子に超音波を照射すると,高濃度のヒドロキシルラジカル(OHラジカル)が生成する。このメカニズムを超音波周波数,溶存ガスの影響,さらには超音波造影剤によるキャビテーション増強効果などから調べた。 2.磁性二酸化チタンナノ粒子の作製 核となるマグネタイト微粒子の出発原料としてFeCl2水溶液を調整し,シリカで包括されたマグナタイト微粒子を合成した。合成された粒子を酸化チタンで修飾するためにチタニウムテトライソプロポキシド(TTIP)を添加した。微粒子を安定化させるために酸化雰囲気下500℃,2時間熱処理を施し,目的とする微粒子を得た。 3.機能性二酸化チタンナノ粒子表面の化学修飾 内分泌撹乱物質はすべて疎水性である。このため,溶媒が水系で微粒子表面が疎水性であれば,疎水性相互作用により内分泌撹乱物質を微粒子表面に吸着できる。これには疎水性を有する脂質オレイル基と,水溶性を高めるためのポリエチレングリコール(PEG)からなるOleyl-O-PEG-NH_2を用いた。これは微粒子表面のカルボキシル基とアミノ基の縮合反応により粒子表面に固定化できる。これによって内分泌撹乱物質を二酸化チタン微粒子表面に濃縮し,超音波照射により発生したOHラジカルによる分解を検討した。 4.高勾配磁気分離に関する研究 磁性微粒子を溶媒中に均一に分散させ,またその接触面積を大きくするためには粒径を小さくする必要がある。しかし,磁性微粒子の粒径が200nm以下になると磁性微粒子の磁性が急激に弱まり,磁場による分離が困難である。このため高勾配磁場を利用し,磁気的に弱い微粒子をも分離・回収が可能な磁気分離装置の開発を行った。
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