研究概要 |
以下の点について検討を行った。 1.TiO_2粒子がラジカル生成に及ぼす影響 サリチル酸ナトリウム水溶液と,TiO_2粒子を反応容器に入れ,これを20℃に調整した恒温槽中で超音波照射(25〜36kHz,200W)を行った。試料を経時的に採取し,高速液体クロマトグラフィーと電気化学検出器によってdihydroxy benzoic acid(DHBA;サリチル酸へのOHラジカル付加反応による生成物)の定量を行った。粒子無添加の場合及びAl_2O_3粒子(Dp=2mm)を用いて同様の実験を行い,添加粒子による比較検討を行った。粒子無添加ではDHBAの生成は極微少量しか確認出来なかったが,粒子添加では超音波照射に伴いDHBA濃度は増加し,TiO_2とAl_2O_3の間には有意な差が認められた。これは溶液中に粒子が存在する場合キャビテーション気泡の生成が促進され,気泡圧壊による局所高温場での水の熱分解が促進し,・OH生成量が増加したと考えられる。またTiO_2粒子添加ではソノルミネッセンスによる光触媒作用によっても,さらに・OH生成が増加した可能性がある。 (2)溶存アルゴン(Ar)がラジカル生成に及ぼす影響 サリチル酸と二酸化チタン粒子を入れた反応容器を30分間脱気した後,Arで10分間加圧した。加圧によりArを溶存させた後,反応容器内を常圧に戻して超音波照射を行った。TiO_2粒子の場合,30分間の超音波照射におけるDHBA生成量は,Al_2O_3粒子と比較して約2倍であり,両者の差は有意であった。Arは熱容量比がN_2,O_2と比較して大きいためキャビティ圧壊時の温度が上昇し,水の熱分解の促進により・OH生成量が増加したと考えられる。さらに,Ar溶存下ではソノルミネッセンスにより,TiO_2の光触媒効果がより活性化された可能性もあり,さらに詳細な検討が必要である。
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