研究課題/領域番号 |
16310061
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
古川 憲治 熊本大学, 工学部, 教授 (60029296)
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研究分担者 |
川越 保徳 熊本大学, 工学部, 助教授 (00291211)
藤井 隆夫 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (80165331)
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キーワード | 嫌気性アンモニア酸化 / Anammox / 部分亜硝酸化 / SNAP法 / 不織布 / 付着固定化 / アンモニア酸化細菌 / アンモニア除去 |
研究概要 |
部分亜硝酸化とAnammox反応が同時に起こる条件を創出することで、アンモニアを一段で窒素ガスに処理するSingle Stage Nitrogen Removal Using Anammox and Partial Nitritation(SNASP)法を開発した。このSNAP法の最大除去能力を明らかにする目的で、合成廃水を使った連続処理試験を実施し、SNAP法が0.8kg-N/m^3/dのアンモニア除去能力を有することを明らかにした。この除去能力は、これまでに欧州で開発されている同様のCANON法、OLAND法と比肩できる能力であった。SNAP法は、沈殿操作が不要で、運転操作が簡単であることから、わが国のみならず、発展途上国での活用が十分に期待できる。 SNAP法の対象となる廃水は、埋立地浸出水、畜産廃水、嫌気性消化脱離液を初めてして、高濃度のアンモニア以外に、有機物も含有されえることから有機物の影響が懸念される。NH_4-NとNO_2-Nを主体とする合成無機廃水に有機物として酢酸ソーダを添加して、SNAP法に及ぼす有機物の影響を連続処理で検討した。その結果、酢酸ソーダのような易分解性の有機物が流入水に50mg/L以上含有されると、これを資化する他栄養性の細菌が増殖し、SNAP法を担うアンモニア酸化細菌やAnammox細菌を阻害することが明らかとなった。しかし、埋立地浸出水や、畜産廃水はSNAP法にかけられる前には、好気、嫌気の何らなの処理を経ているのが一般的であり、SNAP法に取り入れられる廃水には易分解性の有機物は少なく、腐食質のような難分解性の有機物が含まれる。そこで、酢酸ソーダに代わってフルボ酸とフタル酸を流入水に混入させ、そのSNAP法に及ぼす影響について検討した。その結果、これら物質の濃度がCODとして50mg/L以下であれば、SNAP法の窒素除去能に影響を及ぼさないことが判明し、SNAP法を実廃水処理に適用できることが明らかとなった。 長期にわたるSNAP法の運転によって、SNAP法を担うアンモニア酸化細菌とAnammox細菌にどのような変化が起こるか分子生物学的な手法で検討した。その結果、Anammox菌については、熊本大学で新規に発見されたKSU-1株とKU-2株が共存すること、アンモニア酸化細菌としてはNitrosospiraが検出された。亜硝酸酸化細菌としては、Nitrospiraが検出された。これらの結果は、MPN法による硝化細菌の計数結果を裏付けるもので、SNAP法の運転を誤るとすぐにNO_3-Nまで硝化反応が進行することを意味している。 開発したSNAP法のプロトタイプの矩形リアクタでは、スケールアップが難しいことから、カラム型のリアクタに微生物付着固定化担体としての不織布を同心円状に配置するリアクタを考案した。10L容積のカラム型SNAPリアクタの運転操作が、これまでの矩形リアクタと同様の運転操作で運転できることを明らかにした。
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