研究概要 |
膜分離技術は、省資源・省エネルギー的な環境調和型かつ低負荷型のエコテクノロジーであるため様々な分野での貢献が期待されているが、実用化された分離膜は極めて少ない。その最大の理由は、従来分離膜の透過機構が、精密濾過膜や限外濾過膜などで見られる単純なサイズ分離や、浸透気化膜や気体分離膜などの単純溶解-拡散機構に依存しているためである。つまり、これら分離機構では飛躍的な透過性と選択性を実現することは難しい。本研究では、従来分離膜の性能を凌駕する高透過性・高選択性を有する新規分離膜を構築する。 本年度は最終年度として、超薄膜スキン層を有する芳香族ポリイミド非対称膜に様々なイオン種を照射して、その気体分離特性を評価した。さらに、その膜の気体透過機構を明らかにした。具体的には、イオン種(He^+,0^+,N^+,Ar^+)を異なる照射条件でポリイミド非対称膜表面を処理し、作製された膜構造の解析とその気体透過特性を評価した。さらに、形成される透過チャネルの違いを気体透過実験より測定しその透過特性に与えるエネルギ損失機構を電子阻止能、核阻止能の両面から理論的に解析し、各阻止能が高分子構造に与える影響と、その結果示される透過と特性の相関を明らかにした。
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