研究課題
基盤研究(B)
鉄ポルフィリン触媒の活性低下は、主として触媒自身の自己分解に起因することを見出した。まず、腐植物質の疎水部分のモデル化合物としてシクロデキストリン(CD)を用いたところ、触媒の自己分解がCDと触媒との超分子生成により抑制され、それがペンタクロロフェノール(PCP)の酸化促進に寄与することを明らかにした。特に用いたCDの中で、ヒドロキシプロピル-β-CD(HP-β-CD)の添加がPCPに対する酸化脱塩素化に大きな効果を示し、25%程度ではあったが鉄ポルフィリン触媒系では困難とされてきたCO_2までの無機化を達成するに至った。次に、鉄ポルフィリン触媒および鉄フタロシアニン触媒の自己分解速度に及ぼす腐植物質の添加効果を検討した。その結果、泥炭腐植酸のような疎水的な腐植物質の添加が、PCPの酸化分解促進に対して効果を示し触媒の自己分解抑制に有用なことを明らかにした。腐植物質と鉄ポルフィリン触媒との相互作用を紫外可視吸収スペクトルおよび^1H NMRスペクトルにより解析した結果、腐植物質の芳香族部位と鉄ポルフィリン触媒中のメソーフェニル基との疎水的な結合により超分子生成していることを明らかにした。さらに、効果のあった泥炭腐植酸に関して分子量分画を行った。各分画について芳香族成分を分析しPCPに対する酸化率、触媒に対する超分子生成能そして触媒の自己分解速度を評価した結果、最も多く芳香族成分を含む分画がPCPの酸化率および触媒との生成定数が大きく、触媒の自己分解速度が最も小さくなることがわかった。したがって、酸化触媒によるPCPなど難分解性有機塩素化合物の分解促進に寄与する腐植物質の効果は、触媒との超分子生成による触媒自身の安定化に起因すると結論づけた。
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