研究概要 |
研究代表者である西尾は昨年度導入した顕微ラマン分光装置のステージ上に新たに走査トンネル顕微鏡(STM)を備え付け、STM/SERS(表面増強ラマン分光)装置を構築し、その動作確認を行った。空間分解能に関して、除震台の問題、電気的ノイズの問題でサブナノレベルには届かず、さらに改良を加える必要があるが、百nm程度の分解能は得られたので、実際にいくつかのナノ微粒子に対してSTM/SERS測定を試みた。 測定対象とするナノ微粒子について液相でのレーザーアブレーションに着目した。今回はポリペリナフタレン(PPN)の出発物質として用いられるペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)に対して水、およびエタノール中でNd:YAGレーザーの3倍波(波長355nm)を集光照射させることによりPTCDAのナノ微粒子化に成功した。 生成したナノ微粒子を石英基板上に分散させSTM/SERS測定を試みた。その結果、通常の表面増強ラマン分光では信号が極めて弱くスペクトルを得ることができなかったが、STM探針をナノ微粒子に接近させSTM/SERS測定を行ったところ、1290,1360,1600cm^<-1>に明瞭なピークを有するラマンスペクトルが得られ、生成した個々のナノ微粒子がPTCDAであることが確認できた。 研究分担者の福村は、既存のSTM装置に反射型ラマン分光装置を装着し、反射型STMSERS装置を開発した。これによりグラファイトをはじめとする不透明基板上に担持したカーボンナノチューブなど様々なナノ物質のSTM/SERS測定の道が開けた。 最終年度である来年度は、本年度の成果を踏まえ、構築したSTM/SERS装置に対して、除震機構の改良、電磁シールドの導入により空間分解能の向上を図り、レーザーアブレーション法により作製したPPNナノ微粒子をはじめとする様々なナノ物質の個別構造評価を試みる。
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