昨年度に引き続き、有機無機複合型ナノ量子構造物質として、(1)テンプレート法による自己組織化量子構造結晶(量子ドット結晶、量子細線結晶)、(2)逆ミセル法、ホットインジェクション法、One-Pot法による数nmサイズの半導体量子ドットCdS及びCdSeを作製し、高圧下分光測定と高圧X線回折実験によってこれらの物質の電子状態と構造状態の圧力チューニングの物性評価を行なった。 (1)では、量子ドット結晶(CH_3NH_3)_4PbI_6・2H_2OにおいてPbI_6量子ドット間の相互作用が温度・圧力変化によってどのように変化するかに着目した。60℃付近での水分子脱離による量子ドット連結化と圧力印加による量子ドット間の縮小による効果を比較し、有機分子と量子ドットの相互作用が圧力下では重要であることがわかった。面共有型量子細線結晶(C_<12>H_<14>N_2)Pb_2I_6では、圧力印加によって有機分子から無機量子細線への電荷移動遷移を連続的にチューニングすることができることを見出した。 (2)では、特に、Hot Injection法によって作製したCdSeナノ粒子において高圧下での電子状態と構造の粒径や表面配位子依存性に関する系統的なデータを得た。粒径が2.1nmからbulkまでの間で、CdSeナノ粒子のウルツ鉱構造相の体積弾性率とHOMO-LUMO遷移エネルギーにおける変形ポテンシャルが粒径の逆数に比例して変化することがわかった。また、大気圧から3GPaまでで、発光エネルギーの圧力係数はTOPO配位子試料では粒径が小さくなるに伴い圧力係数も小さくなった。一方、HDA配位子試料では粒径によらず圧力係数の変化はほとんど無かった。ここから、表面配位子の状態が高圧下の電子状態に強く関与していることがわかった。
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