本研究では、ポルフィリンとフラーレンを酸化物半導体電極上に逐次組織化する方法を開発した。まず第1段階目として、ドナーであるポルフィリンをデンドリマーや金ナノ微粒子などを用いて、3次元的にナノ組織化を行なった。第2段階目に、ポルフィリンナノ組織体とアクセプターであるフラーレンとのπ-π相互作用により、ドナー・アクセプター複合超分子を形成した。第3段階目では、疎液相互作用により、この超分子が会合した複合コロイドを形成した。第4段階目では、この複合コロイドを電気泳動法により、酸化スズ電極上に電着させ、最終的にボトムアップ式の修飾電極を作製した。この電極を用いて、色素増感型太陽電池を構築すると、そのエネルギー変換効率は最高で1.5%に達した。本系ではポルフィリンとフラーレンのホスト・ゲスト相互作用を制御することで、さらなる効率の向上が見込める。そこで、ポルフィリン修飾金ナノ微粒子上にフラーレンを取り込むバケツ型の大きな空孔を導入することで、光電変換効率を向上させることを試みた。バケツ型の大きな取り込み空間を有するポルフィリン修飾金ナノ微粒子は、取り込み比に関して、より多くのフラーレン分子を取り込むことができ、その結果、楔型の小さな取り込み空間を持つ参照系と比較して、光電変換特性が約1.5倍向上することがわかった。さらにドナー・アクセプター分子を、水素結合によって酸化スズ半導体電極上へ組織化した色素増感・バルクヘテロ接合光電変換デバイスも構築した。
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