研究課題
基盤研究(B)
カンチレバーの機械的運動と光照射の同期をとることで、サブナノ秒からマイクロ秒レベルの時間分解静電気力測定を行う原理検証実験を行った。p型Si(111)は試料-探針間の電界に依存しない約50mVの表面光起電力(SPV)を示す。表面にパルスレーザー光(532nm)照射すれば、瞬間的に50mVの電位差を発生することができる。レーザー光照射とカンチレバー振動のタイミング(位相)を変えたときの、非接触領域における周波数シフトおよび振幅の変化を調べた。一般に非接触領域では試料-探針間の静電気力により、周波数シフトの変化のみが起こり、振幅には変化は現れない。ところが、光照射により試料表面の電位を短時間だけ変化させると、振幅にも大きな変化があらわれることがわかった。光照射とカンチレバー振動周期の位相関係から、試料-探針間における静電気力に関してマイクロ秒オーダーの時間分解能が得られることがわかった。本研究を計画したときには、探針の最下点で、最も強く静電的相互作用が起きると予想していたが、実は、最下点と最上点、つまりカンチレバー振動の折り返し点が、バイアス電圧の影響を最も受けない点であることがわかった。この2点では、振幅変位はともにバイアス電圧にかかわらずゼロであるので、時間分解測定にも利用できない。詳しく解析すると、シリコンの表面起電力は、一定の方向に働くため、バイアス電圧の極性により、静電引力を減らすことになる場合と増やすことになる場合がある。それぞれ、カンチレバーが接近する局面では、減速と加速に対応するが、カンチレバーが遠ざかる局面では反対に加速と減速に対応することになる。カンチレバーの折り返し点周辺では、この二つの働きが拮抗することになるので、光照射の効果が現れないことが判明した。
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