研究課題/領域番号 |
16310076
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
戸田 泰則 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (00313106)
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研究分担者 |
足立 智 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (10221722)
荒川 泰彦 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (30134638)
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キーワード | 窒化物半導体 / 二光子吸収 / 四光波混合分光 / 時間分解分光 / 励起子 / 不純物 |
研究概要 |
本研究では窒化物半導体を対象とした3次元ナノスケールイメージングの開発を進めている。とくにプローブ技術では測定困難な深さ方向のナノスケールイメージングを実現するために、非線形光学遷移を利用した時空間計測技術の確立を目的としている。本年度の研究成果として二つの計測技術について概要を示す。 窒化物半導体GaNには成長過程で不純物準位が形成され、光学応答にも大きな影響を及ぼす。顕著な例は黄色発光であり、不純物準位からの発光であることが指摘されてきた。本研究成果において、我々はGaNの多光子遷移過程を調査し、不純物に起因する局在準位の共鳴を過渡吸収スペクトルの中に見出した。多光子発光との関係から、不純物準位への緩和発光確率以上に高い非線形吸収率を有していることを明らかにした。また過渡吸収スペクトルの中に不純物準位からバンド端に至る広い二光子吸収共鳴が存在すること明らかにし、回折限界程度の空間分解能を有する3次元的なイメージングを実現した。また非線形光学過程を利用した別の計測手法として、四光波混合分光(FWM)を利用した高感度歪計測を実現した。A面サファイア基板上GaNを使用し、基板との熱膨張係数差異方性による一軸歪の定量的な光学評価を行った。実験では直線偏光二パルス励起のFWMスペクトルを取得し、そのスペクトル強度の偏光依存性から、二つの励起子共鳴における反相関的な強度変化を観測した。この変化は一軸歪による励起子異方性に対応し、偏光度に着目すると線形分光の10倍の感度増強が実現できた。これはFWMが振動子強度の4乗に比例することを反映しており、本計測手法の有用性が示された。またスペクトルの偏光依存性には、励起子エネルギーの微小なシフトが観測される。これは交換相互作用による微細構造分裂を反映しており、その分裂幅から歪の大きさを定量的に評価できる。今回用いた試料においては約0.2GPaの一軸歪が見積られた。
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