研究課題/領域番号 |
16310077
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
辻井 薫 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (40360945)
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研究分担者 |
眞山 博幸 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (70360948)
松尾 剛 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (10300899)
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キーワード | フラクタル / 超撥水表面 / 電解酸化重合 / ゾル-ゲル反応 / フラクタル立体 |
研究概要 |
本研究では、数学的概念であるフラクタル(自己相似性)を表面や立体の構造に取り入れることで、ユニークな機能を発現する材料開発およびその応用を目指している。1年目に当るH16年度には、(1)耐久性のある超撥水表面作製、(2)フラクタル立体の作製法の確立、の2点について大きな進展があった。 (1)耐久性のある超撥水表面作製:これまでフラクタルを材料開発に取り込んだ研究として、アルキルケテンダイマー(以下、AKD)という一種のワックスを用いた超撥水フラクタル表面の研究(接触角174°を実現)が知られている。この研究により自己相似性のある表面構造を形成することで液体を完全にはじくフラクタル表面が作製可能であるという設計指針が明らかにされた。しかしながら、AKDはワックスであるために、実用化のために必須条件である耐熱性や耐薬品性等に乏しいという問題がある。本年度では、電解酸化重合による導電性高分子膜により、耐久性のある超撥水フラクタル表面の作製に成功した。具体的には、オクタデシルピロールをアセトニトリル中で電圧22.5Vで60分間ITO電極上で電解酸化重合させた。その結果、150°の接触角をもつ超撥水表面の作製に成功した。さらに、90℃で長時間保存したり(耐熱性)、様々な溶媒(アルコール、アセトン、油脂等)中に浸した後(耐薬品性)、接触角が変化しないことを確認した。現在、論文投稿中である。 (2)フラクタル立体の作製法の確立:フラクタル立体は理論的には表面積無限大・体積無限小であるという性質を有するため、断熱材、触媒、エネルギーの閉じ込め等の機能が期待される。本年度では、フラクタル立体の作製法を確立した。具体的には、以下のような作製法である:(1)AKDを微粒子化し(ヘキサンに溶かし、噴霧することで直径0.1-100μmの微粒子を作製)、(2)室温で静置することで微粒子表面にフラクタル構造を自発的に形成させ、(3)これを容器中に集積し、(4)微粒子間の空隙にテトラメチルオルソシリケートSi(CH_3)_4の溶液で埋めてゾル-ゲル反応させ、(5)電気炉を用いて550℃で2時間加熱することでAKD微粒子を燃焼・除去した。フラクタル立体の評価には集束イオンビーム微細加工装置を用いて断面出し・観察、フラクタル次元Dを評価する手法であるボックスカウント法を用いた。断面には様々な大きさで入り組んだ形状の孔が無数に分布していること、断面のDが1.89であることを確認した。この断面のDの値は、フラクタル立体の数学的モデルであるMenger's sopngeの断面の値に近い。フラクタル立体の作製法については特許出願を行った。
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